「Community collectives」と「WorkLife Palette」が合同開催するラボ、第1回目が行われました! 今回のテーマは「リジェネラティブ・リーダーシップ」。未来に向けて循環型コミュニティを作っていきたいと願うリーダーたちが集まり、学びと対話を深める場となりました。

【当日の流れ】
小林泰紘さんによるリジェネラティブ・リーダーシップ講演
アトリアコミュニティ主宰 井尾佐和子から「アトリアの生命体組織」について
小林さん・田原さん・井尾による3人セッション
交流会
小林泰紘さんの講演
小林さんの自己紹介
Ecological Memes代表、Regenerative Leadership Japan共同代表。世界28カ国を旅し、自然との共生をテーマに活動。馬と共に暮らすプロジェクト「こうのう」なども展開し、「支配せず共に在る」という生き方を模索しています。
リジェネラティブ・リーダーシップとは?
分断を超え、自然の循環や多様性から学ぶリーダーシップ。組織を生命体のように育てるために、リビングシステムデザイン、カルチャー、ビーイングの3層でアプローチする考え方が共有されました。
特に、「たとえ持続可能な社会を目指していても、リーダー自身が内なる生命と調和していなければ本当の変容は起きない」という言葉が、深く心に残りました。
また小林さんは、
「自然環境の再生と、人や地域の再生は“同時に”起こるべきものであり、この“同時に”という感覚こそが最も重要だ」
と強調しました。この視点は、個人と社会、内面と外側の循環を一体で捉えるリジェネラティブなアプローチの核心を示していました。

アトリアコミュニティ主宰 井尾佐和子の講話
アトリアという生態系組織とは?
組織の中で「人を人として見ない」経験をし、社会との分断を感じた佐和子さん。自らを大切にできる場をつくりたいとフリーランスとなり、やがてアトリアを立ち上げます。壁をなくし、子どもと大人が自然に共存できる場、優越感ではなく内なる豊かさで繋がる組織を目指してきた軌跡が語られました。
クルーたちはルーとは、アトリアの理念に共鳴し、自らの意思で関わる仲間たちのこと。それぞれが理念を生きるフリーランス。孤立ではなく「個律」を育み、互いに響き合いながら循環していく文化を育てています。
また、これからのアトリアについても言及されました。
リトリートで人間も自然の一部である感覚を取り戻す
半農半商のライフスタイルを実現し、地球や自然界に思いを馳せながら生きる
経済循環も諦めずに追求する、循環型コミュニティ『Community Collectives』の誕生
持続可能なビジネスと幸福な働き方を両立させるため、時間をかけてでも自然な成長を目指し、アトリアでその実証を続けていくという力強いメッセージで締めくくられました。
小林さん・田原さん※・井尾によるセッション
森のように異なる存在が自然に共存する場をどう実現するか、という問いを起点に、3人の対話が深まりました。
※田原田原真人さんは、教育・組織開発の分野で活動するファシリテーター。共創と対話を軸に、つながりと創発の場づくりを探求している。アトリアとも長く共創の道を辿り応援してくれている存在。
井尾は、かつて「正しい社長像」に囚われ異なる意見を排除していた自分に気づき、NVC(非暴力コミュニケーション)を学び直した経験を共有。小林さんは「差異を祝福できるか」がカギだと語り、田原さんは「フィールド」という目に見えない感覚をどう実感し育てるかの難しさを指摘しました。
それぞれが、言葉を超えた質感を共有しながら、違いを受け入れ、絡まり合い、創発が生まれることの大切さを確認しました。
質疑応答
参加者からも活発な質問が飛び交いました。
Q: 「らしさを決めると狭くなる。でも決めないと動けない。この分岐点は?」
A:(小林さん)仮止めして、行き来し続けることが大事。硬直化を避けるために、常に柔らかく編み直す意識が必要だと語りました。
Q:「リジェネラティブな組織とは、新しく生まれるものなのか、今ある企業がシフトしていくものなのか?」
この問いに対し、
A:田原さんは、最初に気づくイノベーターたちが自己変革を経て統合され、大企業もその流れに続いていくと語り、
井尾は、「豊かに生きる姿」に惹かれて自然に訪れる人たちを迎える、そんな対等な関係性を大切にしていると話しました。
小林さんは、一気に全てを変える必要はなく、社会の中にある多様な役割とプロセスに感謝しながら進むことの大切さを強調しました。


交流会
tsugugoto cafeの温かな雰囲気の中、美味しい食事を囲みながら、田原さん、小林さん、井尾の3人を囲むかたちでテーブルに分かれ、それぞれが自分の言葉に落としながら、ゆっくりと理解を深めようと前のめりに質問を繰り広げる、熱量に満ちた対話の時間となりました。
まとめ
今回のラボでは、リジェネラティブ・リーダーシップの本質は「分断を超えて再統合し、生命の原理に学びながら共に育っていく」ことだという共通認識が深まりました。
異なる個性や価値観を持った者同士が、対立するのではなく、違いを祝福し合いながら新たな創発を生み出していく。そのためには、硬直しない仮止めの意識や、場のフィールドを丁寧に育てていく忍耐と柔らかさが必要であることが、改めて浮き彫りになりました。
生命のように流動的で、しなやかに変容し続けるコミュニティを目指して——この学びと気づきを胸に、それぞれの現場でまた新たな一歩が始まっていきます。