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「ものがたる線」個展 レポート

2024.09.27 up

9月10日から16日、Atlya参宮橋にて、Atlyaクルーの櫻井育子さん・書家としてのお名前は朱紅さんの個展「ものがたる線」が開催されました。

櫻井育子さんは、もとは特別支援学校の教師という履歴の持ち主。

だけど、いわゆる学校制度の中での“教育“に疑問を感じて飛び出し、「生涯発達支援塾TANE」を主宰しながら、子どもときから大好きだった書道を人と人がつながるよすがとして書道塾taneも開催している、発達コーディネーター。

その彼女の初の個展および、個展記念のトークライブ、そして、その後の“墨あそびBAR”を一気にリポートしていきます。

■個展のテーマは「女」

個展の展示は「女」がテーマ。
3本の線で書かれた、描かれたさまざまな「女」たち。Atlyaの一角の白い柱と、カウンターの上の黒地の壁に展示された白い地に墨色のシンプルな線。前に立って眺めていると、それぞれの女たちが、それぞれの物語を語りかけてくるよう。私はどの女だろうか? いや、どの女でもあり、どの女でもないような……そんな思いが頭の中を巡ります。

明るいガラス窓には、半透明の紙の上に、文字が並んで踊っていました。私たちの知っている文字たちが徐々に形を変えて、象形文字になったり、線になったり、まさに歌い踊りながら、長い人類の歴史を物語っているように見えました。

よく見ると、お店の入口やオフィスとの境のガラスにも線は描かれ、そしてふと見渡すと一枚の木の板が壁に。これも、もちろん作品。そして、掲示されたり机に置かれていた、育子さん(朱紅さん)の心の襞を綴ったここまでのストーリー。
これらがAtlya空間に統合され、この場所全体が、“書家“でありながらも、まだ名前のつかないアートを模索し続けてここまできた育子さんの“アーティスト宣言“に思えて、なぜかとても勇気づけられる、そんな個展でした。

■【アトリエアトリア主催】“世界の見方ダイアログ!” 書家×ゲームクリエイター×アトリア代表が語る未来の教育クロストーク&墨あそびBAR

15日には、【アトリエアトリア主催】“世界の見方ダイアログ!” 書家×ゲームクリエイター×アトリア代表が語る未来の教育クロストーク&墨あそびBAR が開催。
ダイアログは、育子さん、漢字で戦うカードゲーム、カンジモンスターズシリーズを考案、製作した森本佑紀さん、そして、イベント開催会場であるアトリア参宮橋を運営するYou be You株式会社代表井尾佐和子の鼎談形式でスタート。

それぞれに「子どもの頃どんなふうに世界を見ていたか」に始まり、「『好き』を追求する心を育てること」、「観ることの大切さ、子どもを見ることも大切だがその視線の先を一緒にみたい」、「働くと生きるを分けない」、「ある年齢までは自由を楽しめるが、大人は墨遊びで『自由にどうぞ』と言われるととまどう」、「誰も同じ字は書けない」「はみ出し続ければ、そこに道ができる」など胸を突かれるキーワードがどんどん飛び出しました。

また、佐和子さんが突然、会場に話題を振ったりして会場とのやりとりも活発に。「大人になるとつい空気を読んでしまう」「人に求められることをやろうとする」などの話題から、「多様性とは」「自分を生きるとは」などAtlyaらしいディスカッションに発展しました。

対話を楽しんだ後は、墨遊びにちなんだメニューを楽しみながら、いよいよ“墨あそびBAR”です。
育子さんの書、そしてダイアログに刺激を受け、嬉々として紙に向かう人々。「書を書くとはこう」とか「筆と墨はこう使う」といった既存のイメージを越え、自分の殻を破って自由に白黒の世界で遊ぶのが、育子さんの提唱している墨あそび。

この日も育子さん持参の割れている筆や、長くて思い通りにならない筆、また、筆ではなくて綿棒や竹ひごなどで書いたり、描いたり、墨汁を紙に垂らしたり、飛ばしたりしながらどんどん没頭していきます。

墨を使って、ただ描く。そこから生まれてくる線や点、やがてそれが文字になるなら文字でもいい。
からだから出てくる線をただ表現する。
ただ、楽しむ。
すると、どこから見てもかっこいいアートが出来上がってしまう。
アーティストである自分を発見する、自己肯定感100%の遊び。これが、育子さんの言う“誰でも調子に乗れる“墨あそびです。

お酒などのドリンクと竹炭を使ったユニークで美味しい料理を楽しみながら、調子に乗る人続出のこの日のAtlya。

それは、ただ楽しむだけでなく、この日のイベントに参加することで、ワタシクリエイトの4つの要素「ワタシを知る」「ワタシとアナタと対話する」「ワタシに還る」「ワタシを表現する」を実践し、そして誰もが唯一無二のアーティストであることを知る宵でもあったのでした。