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2019年9月28日 年間トークイベント Atlya NEWAGE Cafe vol.4 遠山正道さん
【アート×コミュニティ】

今回のニューエイジカフェゲストに、株式会社スマイルズ代表取締役社長の遠山正道さんをお招きして、【アート×コミュニティ】というテーマでAtlya参宮橋代表の井尾さわことの対談が行われました。
私は遠山さんの対談を聞かせていただくのは2回目でしたが、遠山さんは商社時代に3ヶ月をかけて『スープのある1日』という企画書を作ったそうです。遠山さんのお話も、その画やストーリーがまじまじと頭の中へ浮かんでくることで自分が本当に見ているかのような感覚に引き込む不思議さがあります。人の感覚に見せることのできる遠山さんはやはりアーティストなのだと感じました。


白いハイソックス&短パンというスタイリッシュな出で立ちでふらりとAtlya参宮橋へいらっしゃった遠山さん。
ファッションも登場の仕方も素敵です。



遠山さんは「課題解決≠ありたい姿(ビジョン)」とおっしゃり、ありたい姿(ビジョン)を持っていることはアートに似ていると感じているそうです。そして、「アーティストっぽい人が経営者になることが多い」とおっしゃっていました。 では、どうゆう人が遠山さんのおっしゃるアーティストっぽい人なのかを聞いていきます。


まず、遠山さんが代表を務める株式会社スマイルズでは「自分ごと」という社員同士の共通言語があるそうで、スマイルズから起業した社員の方たちにもこの「自分ごと」にモチベーションがあると話してくださいました。
それは「作品(企画)の裏にあるストーリー(動機)」が自分ごとであり、それがモチベーションとなっていることを指しています。
「〇〇のため」では自分で責任を取らなくていいし、何かあれば他責にしてしまうから「会社(や上司)が〜だったから」などという言い訳が出来てしまうと遠山さんは言います。しかし、「自分ごと」になれば誰のせいにもできない。
経営において、たくさんの失敗もあるだろうし、不本意なことも起きるかもしれません。でも、「それでもやる!」というモチベーションは「自分ごと」でしか始まらないと感じているそうです。

例えば、遠山さんご自身がスープストックを始める際に「女性がスープをすすってホッとしている姿が浮かんだ」というお話は有名なお話かもしれませんが、当時、遠山さんの生まれたばかりのお子さんがアレルギーを持っていたため、授乳期間中の奥様の食事制限がとても厳しく食べれないものばかりだったということを今回の対談の中でお話ししてくださいました。 スープストックの商品は体に優しいものをという遠山さんの想いはこのご家族への想いが内発的動機となり作られたスープという形の作品だったのかもしれません。
そして、スープストックのスープは、お客さま一人ひとりの心の隙間にスッーと入っていける、そんな共感性を持った作品なのです。目には見えていないけれど確かにある、ある種このようなインフラを世の中に起こしたいという遠山さんの想いもスープストックには込められているようでした。


その後も遠山さんは日本各地にいる元社員の方々が、どのような「自分ごと」からどのように事業を立ち上げたのかというストーリーをとても嬉しそうに紹介してくださりました。

・檸檬ホテル
1日1組だけのホテル
http://lemonhotel.jp

・森岡書店
1冊の本を売る本屋
https://ja.takram.com/projects/a-single-room-with-a-single-book-morioka-shoten/

・toilet
トイレにこもっているような気分を味わえるバー
https://newsphere.jp/signpost/20180514-2/

etc…

今後は小さなプロジェクトの積み重ねが重要になってくるだろうと遠山さんは話し、その際〈自ら仕掛ける人〉〈お声がかかる人〉〈どちらでもない人〉という3パターンに別れるという。サラリーマンが出世する時代は〈お声がかかる人〉でも良かった。しかし、これからの時代は人生100年時代となる中で、小さくても自分から仕掛けられる側にいけることが大切ではないか、とおっしゃっていました。




また、慶応義塾大学ご出身の遠山さんは、創立者である福沢諭吉先生の「独立自尊」という言葉を大切にされているそうです。この言葉の意味は「自立して自らを尊重できているということであり、自分のことをしっかりやるということでもある。」
この「自分のことをしっかりやる」という点で面白かったのは「自分の〈欲望〉も含め自分のことをしっかりやる」というところです。
確かに、ビジョンを生み出すには〈欲望〉が存在し、経営者にとってもその〈欲望〉が現実に形を作り出すための情熱になる。それはまさにアートティストと似ていて、ここでもスマイルズの「自分ごと経営」と一貫して通ずるところがあるように見えます。


そして、この考えは、現在スープストックの店舗が全国50店舗に数を留めていることにも関係していて、スープストックの商品やお店は遠山さんの「自分ごと」から始まった作品であるため、店舗数の〈π(パイ)〉を大きくすることはその作品(商品やお店)が拡がっていくことになります。それは自分の手を離れて誰かに任せていく部分も増えていくということでもあります。店舗が増えるということは新たなチームを立ち上げ、スタッフたちに任せていけるようになるということ。そこには多くの時間と労力を要します。店舗を増やすことでのメリットが、お金以外にあまりないと思い、50店舗から拡張をしていないと遠山さんは教えてくださいました。

そんな「自分ごと」を大切にするスマイルズでは、こんな面白いエピソードがあると遠山さんは話してくださいました。

一昨年、表参道にあった知人の方のレストランが閉店することになった際、そのお店がとても素晴らしかったので遠山さんは経営を引き継ごうとしていたという。しかし、その話を社員に伝えたところ、社員たちから「なぜ、私たちがやるのか?」と遠山さんに問う場面があったといい、結果、そのレストランはそのオーナーの「自分ごと」があって始まり、そのオーナーがやっていることに価値があるのではないか?という話しになったというのです。

このエピソードからスマイルズでは「誰がどうしてやるのか?」「自分ごとになっているのか?」の問いを遠山さんにも出せるほど浸透したものになっているということがうかがえます。



「社員の方から、逆に『誰がどうしてやるのか?』を問われたりします」という遠山さんの表情はとても嬉しそうに見える。


また、遠山さんは商社や美大でも度々お話しをされていて、その際に「子どものまなざし ×大人の都合」を意識してお話しされているそうです。
美大生たちの前では「大人の都合」の大切さ(ビジネス視点)も語り、商社マンたちの前では「子どものまなざし」(アート的思考)の話に注力して話すことで商社の社員・美大生それぞれの環境の中で欠けてしまいがちな部分を意識していけるようにお話されているという。
現在、世界中でアート思考への注目が高まっていますが、遠山さんはご自身が経営者となり「アートはビジネスではないけれど、ビジネスはアートに似ている」と感じているそうで、この「子どものまなざし ×大人の都合」のバランスが取れた時、世界はもっとクリエイティブに動き出すように感じました。



井尾も自身でブランディング会社を経営をしながらグラフィックデザイナーとしての経験持つことから、クリエイターやアーティストが作品を世に出していきながら生きていけるプラットフォームを構築予定だ。さらには、クライアントと最適なチームを組んで、クライアントにクリエイティブを提供できるファシリテーションの仕組みや、クリエイティブを発注する側へのリテラシーアップを目指す経営者向けの学び舎を今後構築していこうとしています。その点で遠山さんと井尾のアートやアーティスト、クリエイターたちへの想いがリンクしたことで、今回のこの対談を実現させることができました。

この記事を書いたのは… 佐藤 めぐみ

佐藤 めぐみ

佐藤めぐみ / コミュニティマネージャー 女子美術大学芸術学部芸術学科卒業。 学生時代からデザインやアートに学びの本質や楽しさを感じる。加えて、大学時代に生涯学習論を学んだことで、大人が学び続けることの大切さを漠然と感じていた。6年間、都内で民間学童保育スタッフとして勤務。子どもたちと共に生活する中で「子どもの社会は大人の作る社会の縮図」だと実感したことで大人の学びや内省の重要性を言語化できるようになり、子どもの気づきの場から大人の気づきの場へより関わりを持ちたいと思うようになる。 2019年8月からAtlya参宮橋にて勤務。 港区×慶應義塾大学のご近所イノベーター養成講座7期としても活動中。